BLue CaFe NeT

by HiRoo iNoue || ACTOR

架空の友に宛てる架空の手紙

恥ずかしげもなく言葉にするなら
きみに出会えてぼくは幸せです。
理由はよく分かりません。
ただ純粋に、ぼくはきみに興味があるのです。
きみのことが好きなのだと
言い換えてもいいかもしれません。
ぼくの人生にきみが
そして、きみの人生にぼくが
現れたのは必然であったようにさえ思えます。

でもぼくは、きみの本当の顔を見たことがありません。
きみの本当の声を聞いたことも
きみの本当の匂いを嗅いだことも
おそらくないような気がします。
たぶん、その逆も言えることでしょう。
ぼくたちは、見えない鎧を身につけて
見えない仮面を身につけて
見えない透明な壁ごしに相対しています。
それをようやくすり抜けて届けられる微粒子に
ぼくの細胞は反応し、微笑んでいるのかもしれません。

ただぼくは、欲張りで疑り深いので
それだけでは満足することが出来ません。
もっと暴力的に、もっと盲目的に向かいあって
化学反応を起こしたいと思っているのです。
そして、それがとてつもなく素晴らしいことだと
心から信じているのです。

だからぼくは、両手を広げて胸を開いて
皮膚を破って、骨を砕いて、内臓を引き出して
ぼくのあるがままの姿を見せようと思っています。
そして、きみにもそうしてほしいと願っています。
ともにさらけだし、ともに引き受けあえたらと思っています。

幾重ものフィルターで濾過される手前には
醜くてドロドロとして殺伐としたものがあるかもしれません。
甘えやわがままや要求や批判や凝縮された感情が
マグマのように渦巻いているかもしれません。
でもぼくは、観光地化された南国の楽園でではなくて
荒涼とした世界の果てできみと出会いたいのです。
そこにはもう、どこへも逃げる場所はありません。
追いつめられて、苦痛や孤独と戦わなければなりません。
でも、だからこそ、本当にぼくたちが出会える場所は
そこしかないと思っているのです。

一方通行ならば、ぼくが単にわがままだと見えるだろうし
そもそも、極端で傲慢な考えだと笑われるかもしれません。
いやそれ以前に、きみはぼくを友と思っていないかもしれません。
でも、友よ。
傷つき倒れることを恐れつつも最大限の勇気を振り絞って
ぼくは、世界の果てできみを探しています。

今年も終わります。
来年がお互いにとってよい年でありますように。