uncomfortable
これまで芝居でやってきた役柄にはどれも愛着があるけれど、「動物園物語」のジェリーと、「あわれ彼女は娼婦」のソランゾには、その中でも特別な思い入れというか、親近感をもっている。
そして今回やっている「仔沼鳶雄」には、それらに匹敵する、もしくはそれ以上の思い入れを感じられるようになってきた。もちろん、今現在関わっている役だからかもしれないけれど、とにかく彼のことが愛おしくてたまらない。
以前とある演出家がこう言っていた。
君が舞台上で楽な状態でいると感じたら何かが間違っていると思いなさい。戯曲に描かれる登場人物はみな何かを抱えて苦しんでいるのだから、君自身も居心地の悪い状態に耐えていなければならないはずなのです。
彼らは、現実を受け止めて受け入れようと努力してもがき、立ちはだかった壁を乗り越えようと必死に戦っては倒れるのだ。そして、その戦い苦しみもがくそのさまをぼくらは体現しなければならない。そんな当たり前のことが、実感として分かりかけてきている気がする。
今回の役と向き合えるのもあと数回。一回一回大切に、彼が必死に生きた道筋を辿ってみたい。