自戒

生きていくことが大変なのは、自分がどんな状況におかれていようとも容赦なく時が過ぎていくからだろう。立ち止まることを許されずに新たな時に対応し続けなければならないからだろう。時の流れはいつでも冷酷なほど等速だ。

芝居をしているとついそのことを忘れてしまいがちになる。自分の都合で時を止めたり速度を変えたりしてしまう。そのことでより劇的な瞬間を生み出せると勘違いしてしまう。でも本当はそうじゃない。登場人物たちが大変なのは、時が容赦なく過ぎていくからなのだ。時を支配することが許されず、いつでも生き続けなければならないからなのだ。そして与えられた言葉や時間は当然の権利ではなく、その人物が限られた時間の中で、進み続ける時間の中で、必要にかられてようやく獲得出来たものなのだ。

集中と没入は違う。場を支配することと時を支配することとは違う。「時」という共演者を忘れないように。