BLue CaFe NeT

by HiRoo iNoue || ACTOR

「物語」の行方

ひさびさにものすごい芝居を観た。NODA・MAP『ザ・キャラクター』。心にズシリと残る作品だった。

村上春樹氏が『1Q84』でやろうとしたことと同じことを、奇しくも同時期に演劇でやろうとした作品だと思えた。そのテーマの共通性ということより、これまでの作品作りで蓄積された方法論の力強さと、それによって表現することが可能になった世界の広がりと、表現者として世の中と対する覚悟の大きさを感じて、『1Q84』と同じ意味合いで、完膚なきまでに圧倒された。

健全な物語、そして体系を保ち続けることと変化していくこととの折り合いのつけ方には、一体どこに正解があるのだろうか。一市民として、演劇人として、「自分の居所」を考えさせられる作品だった。

たぶん「いまさらなんで?」なのではなく、「いまだからこそ」なのだろうと、ぼんやりと考える。忘れられるよう祈っても忘れられずに残ることがあり、忘れてはいけないことが必ずある。

そんなことを考えていまだに心が震えている。